東方の読み物その2です。
読みたい方は続けてお読みください。
(長めです)
有名な無名人 – 会(前)
「準備できましたかー? 「ん?あ~もうちょい待ってくれ。 今日は予定していた花見の日だ。 俺は今、自分の身支度をしている。 仕事道具も持って行く。 初対面で話のネタも無いのはアレだから、 ネタの一つにでもなるだろうと思ってな。 「・・・よし、準備完了! 早々に家から出て、待たせたな、と待ち人に声をかける。 「では行きましょうか。 「ああ。 そうして俺と稗田阿求の2人は、花見場所へと向かう。 ・・・ふと思ったんだが、 端から見ると俺の存在はどうなんだろうな。 特別珍しそうに見ている訳じゃなさそうだ。 というか外の者に対して思ったほど関心はないのかねぇ里の者達は。 「・・・そういや、花見場所って、里の外にあるんだろ? 今回の目的地である花見の場所は里の外にある。 里の中は安全とされているが、 そこから一歩外に出てしまえば、いつ襲われてもおかしくない。 「ええ、そうですよ。 でも安心してください。 参加する方々はそこら辺の妖怪とは渡り合える方達ですから。 「・・・そうか。 前に言ってた妖怪退治の専門家とかもいるのか? もしそうなら、どこか出かけたいときにでも護衛とかを お願いできるように親しくした方が良いかもな。 「それに、近くに寺があるから、 何かあってもそちらに匿えば安全ですよ。 「成る程、一応の安全は保証されてるというわけか。 「そういうことです。 笑顔で返事をする阿求だが、その前に襲われたらどうするんだ? と、俺は心の中で突っ込んでおいた。 それから、当然の事ながら舗装されていない砂利道を歩く。 妖怪には会わず、俺は道中平穏な田舎そのものを感じていた。 遠くの林の近く、道の両脇に満開の桜がある場所が見える。 そこが今回の目的地だ。 良く見ると少し横に寺の一角らしきものが見える。 「お。きたな。 「ちょっと遅かったからついさっき始めちゃったよ。 先客の二名はそうして出迎える。 「ちょっと遅いって言っても、 まだ慧音さんと妹紅さんしか居ないじゃないですか。 「つい待ちきれなくてさ・・・。 ごめんよ。 そういって片方の女性は一口呑む。 そして、すまないな、と、もう片方の女性は謝り、 「それで、そちらの男性が 先日話してた『あの』外来人かな? 慧音と妹紅――俺はどっちが誰かはわからないが、 阿求が言っていたのだからそうなんだろう――の二人は此方を見る。 「『あの』って言うのはよく分からんが。 ・・・俺は威原 連氏だ。 昔からから良く連って呼ばれてるからそう呼んでくれて構わない。 「そうか。 私は上白沢 慧音だ。 里で寺小屋を開いて歴史などを教えている。 と言うことは、四角い帽子をかぶっている方が慧音で、 「私は妹紅。 慧音の友人ってところかな。 私は里に住んではいないけど、たまに慧音と一緒にいるから 里とかで見かけたらよろしくね。 さっきから酒を呑んでいる方が妹紅か。 「ああ。二人とも宜しく。 軽い自己紹介もそこそこに阿求と俺は花見の会に加わる。 俺は並べられたお節料理を一口食べた。 ・・・うん、美味いな。 きっとどちらかが作った手料理なんだろう。 と、ふと思い出す。 「・・・なあ、あと誰が来るんだ? 集まるのはこれで全員ではない。 だが、誰が来るのかということは俺は知らなかった。 「とりあえず誘ってるのはアリスと、あと藍だな。 どうやら後2名らしい。 そのうち1名は俺は知らない。 「あれ?紫さんや橙ちゃんは呼んでないんですか? 「紫は別の仕事があるらしい。 橙の方も何かやってるらしいが、何をしているかは 知らないな。 気になったので聞いてみる。 「アリスってどんな人なんだ? ・・・いや、妖怪なのか? 「ああ、どちらでもないな。人間でも妖怪でもない。 彼女は人形を扱うことを得意とする魔法使いだ。 魔法使いには種族としてのそれと、 職業としてのそれがある。 彼女の場合は前者、魔法使いの種族だ。 「成る程、つまり魔女か。 「私としては人形遣いって言われてる方が 肌に合ってると思うのよね。 ちょうどいいタイミングに噂の張本人がやってきた。 「噂をすれば来たな。 「遅れてごめんなさいね。 俺はアリスの姿を見、 「君がアリス? と疑問を口にする。 「そうよ。 ・・・どうしたのよ。じろじろ見て。 身なりもそうだが、人形のような美しさを持つアリス。 俺はそれに魅入られているというわけではなく、 俺が思っていた先入観と大きく違っていたためだ。 本人かどうか確認したのはそのためだ。 「種族が違うとは言えど、 姿は若い人間そのものなんだなぁと思って。 「そういうもんじゃないの? 「少なくとも俺はこんなに若々しい魔法使いとは 思いもしなかったな。 「そうなんだ。 まあ此処じゃ魔法使いに成れるのは 比較的楽らしいわね。 昔はそれこそ人生を掛けて努力するほどだったらしいし。 「俺が思っていたのは大体そんな感じだな。 つまり、老婆の姿で黒服っていう、 まあずいぶんと古い感じに考えていたわけだ。 「さて、後一人か。 「待たずに始めちゃっててすまないが、アリスも適当に食べてくれ。 「ええ、そうさせて貰うわ。 そういわれ、早速アリスが一口。 「・・・あら、結構美味しいわね。 「だろう? 何しろ私と慧音で作った料理だからな。 ふと阿求が苦笑した。 なぜだろう。 ・・・それから暫くたつが、 「・・・遅いですねぇ、藍さん・・・。 「そうだな。 藍はまだ来なかった。 数刻はたっただろうか。 「・・・そういえば連。 料理を一つ頬張る前に、妹紅に呼ばれる。 「・・・ん?なんだ? そのまま口に頬張らず、自分の受け皿に戻す。 「確か連はアクセサリーを創って 商売をしているんだって? 「ああそうだ。 うちはそういう家系だったからな。 受け継いでいるのも生きているのも、もう俺だけだが。 俺が悠長に幻想郷にいるのはこのためでもあり、 外の文化にあるべき家系ではないのだろうとも思っている。 「そうか・・・。 それは是非君の作った作品を見せてもらいたいものだ。 そういうことを知ってか知らずか、はたまた話のネタとするのか、 慧音はそう言った。 「そういうと思って・・・ ほら、持ってきておいた。 俺は持ってきた袋から、 外の世界で売っていた(売れ残りともいう)幾つかのアクセサリーを見せた。 「ほう・・・。 それぞれが俺の出したアクセサリーを手に取っていく。 「へぇー。 結構器用なんだな。見かけによらず。 「一言余計だ。 そして、アクセサリーを手に取ったアリスが少し疑問を持ったような顔をする。 「・・・でも、これらって外で創ったものよね? 「ああ、そうだ。 「微弱だけれど、少し魔力を感じるわよ? ・・・そうか。分かる者には分かるほどなんだな。 俺は魔力を感じるという感覚すら分からない。 「え?そうなんですか? 阿求には分からなかったらしい。 「それについてはこっちに来たときにも言われたんだが、 何故そうなっているのかの詳しい理由は聞かれてないんだ。 どうやら俺の創るアクセサリーには相手によっては 魔力等が付与されるらしい。 「ふぅん。 「俺自身が感じた相手の想いを基にしてアクセサリーにする 伝統の技術が伝わってきているんだが、 どうやらそれが関係してるらしいんだ。 ここに来る時に言われたそれの要因を話す。 「ともかく、それが原因で連れてこられたってわけね。 そういうことらしい。 と、不意に後ろから、 「正確にはその力が必要だったんだ。 八雲 藍の声がした。 彼女は俺の後ろに立っていた。 正直を言えば俺は気配を感じていた。 いや、誰かまでかは俺には分かるはずがないが。 というか俺が気付くのだから誰か藍に気付いても いいんじゃないのか? 「ん?おお、藍か。 遅かったな。 そして今気付いたかのような反応をする慧音。 「遅れてすまない。 突然紫様が手伝えと言い出して、その上作業が長引いてしまった。 「そうか。それなら仕方がないな。 そして、そのまま藍も花見に加わる。 「・・・それで、『必要だった』って? 藍が「うん、美味い」と油揚げを食べたところで アリスがさっきの話を続行させる。 「なにか良からぬ事にでも使うのかしら? 「うん?ああ、そうじゃない。 軽く即答する。 「・・・前に局所的な異変が起きたのを知ってるか? 「ええ。 あの新聞に載ってたアレでしょ? 「そう。アレです。 ――アレ、とは、 御守りとして機能すると言う珠が現在いくつか存在しているという話だが、 この珠が本来の活動を越えて暴走し、 局所的な異変を引き起こした事件のことのようだ。 この異変は珠自身が引き起こしているためか、 通常の方法ではその珠の力を抑える事ができず、 問題の解決すら困難を極めるらしい。 この事件について、俺は先ほど話していた新聞で知った。 其処にはこれを解決したのは外来人ということも載っていた。 ・・・そして俺はその外来人に会っている。 「博麗以外の者にしか解決できないような大きな異変となってしまえば極めて危険だ。 だから、それを防ぐ・・・と言うより、解決しやすくするために彼の技術を利用する、 という話だ。 「それも前に聞いたが、ホントに出来るのか? 「ああ。 でもこれは仕事の話で今はそんな話をしに来た訳じゃない。 今日は純粋に花見を楽しむ事にしようじゃないか。 「ああ、・・・そうだな。 そして、昼下がりと夕方の境界が判り辛い時間帯まで 花見と料理の味を楽しんでいった。
・・・とまあ長くなってしまったのでキリの良いところで。
2010/02/25 – 出来ました。
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