東方の読み物を書いてみました。
興味のある方はそのまま下記を読み続けてくださいな。
有名な無名人 – 初日
俺は威原 連氏(いはら れんし)。 連って呼ばれる事が多い。 代々受け継がれてきた手作りのアクセサリー職人の末裔だが、 自分自身はまだ職人とは呼ばれない。 俺の家系の職人の極意は、『自分の想う心』。 つまり自分らしさと自身の生み出す心像の反映をモットーとしている。 そのため、俺の家系伝統のアクセサリー職人として認められるのは 師匠からではなく、全て他人からの評価となる。 そして今の時代、身に付けるアクセサリーと言えば機械のオーダーメイドが一般であり、 専門的な手作りアクセサリー技術はほぼ廃れている。 これはつまり、俺の作品を評価する者やファンが世界にはもうほとんどいないというわけだ。 とはいえ、最近では原点回帰と言うのだろうか、手作りアクセサリーを売っている俺の店には 以前よりかは訪れる客が増えているようだ。 ああ、店って言うのは露店だ。テナントを借りてるとかそういうことはない。 まあ、俺の世界はそんな世の中だった。 さて、話が急転するが、そういった世間から かけ離れた ―と言うよりは全く違うといった方が良い― 世界に居る。 此処は俺の居た世界には無いモノが有る世界― 幻想郷だ。 俺は所謂スカウトのような行為によって半ば強制的に連れてこられたわけだが、 俺自身、来て良かったと思っている。 向こうの世界では堕落し、淡々とした生活をしていたからな。 心がだらけていたら、俺の技術が曇る。 だから、自らこの世界に住むと決めたんだ。 此処のような、ちょっと危険で、毎日が違うような人生というものを 欲していたのかもしれない。 少々不便のある生活の方が好きなタイプだから、と言うのもあるのかもしれん。 ちなみに、此方でアクセサリーの製作をしたのはまだ2回しか行ってない。 何故かというと、それは此方に連れてこられた理由でもあるのだが、 まあ、その話は別の時に話すことにしよう。 そして今、俺はどうしているのかというと、人間の里に住処を貰い、先日そこに住み始めたと言うわけだ。 どういうわけか、この家の室内は近代的な雰囲気だ。 外からは普通の古い木造住宅の形をしているのだが、 壁紙が張ってあったり、壁のスイッチで明かりがつくあたりが特に古典的で近代的に感じる。 そして、この家の向かいには屋敷がある。 其処には、九代目阿礼乙女と言われる、稗田 阿求が住んでいる。 既に挨拶、多少の雑談もしている。 此処に住まわせてもらえたのも彼女のおかげだ。 二度目の製作の依頼があった後、 案内役と共にこの人間の里にやってきた。 その時に阿求に会い、此処に住まわしてくれることになったのだ。 此方に来た時点の出来事で既にその類の耐性はついているのでそれ程驚きはしなかったが、 九代目とは言っても阿求自身はそれぞれの代の人であり、祖である稗田阿礼でもあるらしい。 『代』とついているのは彼女(彼の時もある)が転生を行っているからだそうで、その代償として 他の人間の寿命の半分以上も生きてはいられないらしい。 そのことを考えるとそれは酷な事ではないかと思った。 阿求もそう思うところもあるようだが、阿礼の子としての使命なので、仕方がないという。 それに、今までの代より、 『死に別れた後、私を覚えていてくれる妖怪達がいる』 ことから、以前よりは悲観的にならずに済むらしい。 俺にとってはさすがに理解しがたい部分だ。 これまでのことをそのまま考えると、 彼女自身は相当の長生きで、何度も辛い別れを経験したという事になる。 そのような経緯があったということだが、ごく普通の頭の良い女の子だったな。 隣同士、仲良くなれそうだ。 ただ・・・。 いや、分かっていることなのだから 言わなくてもいいだろう。 さて、そんな今の季節は春だ。そろそろ花見の季節だな。 今年は俺の世界ではすることが無かった『花見』を今回することになりそうだ。 幻想郷では外と比べて非常に花見が好きらしく、 早速俺も阿求から誘いが来た。 外の世界で言う学校の先生とその友人、あと他数名も参加するらしい。 どんな人たちだろうな。 各地に桜があるので、この頃の花見は色んな所で行われるそうだ。 今回は里の外れにある桜の元でするそうだ。 一番綺麗なところは博霊神社や白玉楼というわりかし有名な処らしい。 博霊神社では毎年、花見に沢山の妖怪が来るらしい。 一応、安全らしいので、先日の縁もあるから其方にも行ってみようと思う。 うーん。こんなにも花見が待ち遠しいと思ったのは初めてだな。 まるで子供の頃の遠足前夜の気分だ。
良くある導入編ですね。というか、彼の日記ですな。
と言うわけで簡潔にまとめ。
主人公は威原 連氏(いはら れんし)。通称「連」。男性。
手作りアクセサリーの技術を持つ青年。
先日、半ば強制的に幻想郷に連れられた。
今では此処が気に入り、自ら定住することを決めた。
場所は稗田家の屋敷の向かい。
家は見た目木造住宅、中は現代チックな内装。
以上。
因みに、この話は前にも後ろにも続いていきます。
ここでは後ろの話を中心に進めていきます。
前の話はいずれ時が来たときに。
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